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2025.04.22  帰宅後の出迎えがない…?|愛犬の行動変化は心臓からのSOSかもしれません

「ただいま」と玄関を開けたとき、いつもなら嬉しそうに駆け寄ってきてくれる愛犬が、ある日突然、奥の部屋でじっとしたまま出てこない。そんな変化に気づかれたことはありませんか?

実は、こうしたちょっとした行動の変化が、心臓の病気、特に「僧帽弁閉鎖不全症」のサインの場合があります。この病気は小型犬に多く見られる心臓疾患で、犬の心臓病の中でも最も発症頻度が高いとされています。

僧帽弁は心臓の中にある逆流防止の弁で、血液を一方向に流す役割を担っています。しかし加齢などによってこの弁がうまく閉じなくなると、血液が逆流して心臓に負担がかかり、さまざまな症状が現れるようになります。放置すれば命に関わるケースもあるため、早期の発見と適切な治療がとても大切です。

今回は、愛犬の行動変化から気づける僧帽弁閉鎖不全症のサインや、正確な診断に役立つ最新検査、治療・管理のポイントについて詳しくご紹介します。

■目次
1.いつもと違う行動に要注意|僧帽弁閉鎖不全症の初期サイン
2.僧帽弁閉鎖不全症の原因とリスク要因
3.アルファ動物病院での最新診断技術
4.治療と日常生活の注意点
5.まとめ

いつもと違う行動に要注意|僧帽弁閉鎖不全症の初期サイン

僧帽弁閉鎖不全症の怖いところは、初期症状が非常に軽いため、飼い主様が見過ごしてしまいやすいことです。

たとえば、以下のようなサインはありませんか?

最近、少し咳をするようになった
散歩の途中で立ち止まることが増えた
運動後に息があがりやすくなった

これらは加齢や疲れのせいと考えられることもありますが、心臓からのSOSかもしれません。

特に注目したいのが「これまでしていたことをしなくなる」行動の変化です。
たとえば、これまで玄関まで出迎えてくれていた愛犬が急に出てこなくなる、大好きだったおもちゃで遊ばなくなる、階段の上り下りを嫌がるようになる…こうした小さな変化が、心臓に負担がかかっているサインかもしれません。

進行すると咳の頻度が増え、呼吸が荒くなる、夜間に咳き込むといった症状が現れ、さらに重症化すると「肺水腫」(肺に水がたまる状態)や失神などを引き起こすこともあります。
だからこそ、早めに気づいて、必要な検査を受けることが重要です。

僧帽弁閉鎖不全症の原因とリスク要因

僧帽弁閉鎖不全症の主な原因は、加齢による弁の変性(変形)です。年齢とともに弁の弾力性が失われ、閉じにくくなることで逆流が起きてしまいます。

特に以下の犬種では発症しやすい傾向があります。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
マルチーズ
チワワ
トイ・プードル など

これに対して、大型犬では「拡張型心筋症」という別のタイプの心疾患が多く見られます。

心筋症についてはこちらから

また、体重管理も大切な予防・進行抑制のポイントです。体重が増えると心臓にかかる負担が増えるため、適正体重の維持が重要です。ただし、高齢になってから急激に痩せると、筋肉量が減って心機能が低下するリスクもあるため、若いうちから適切な体型を保つことが望ましいといえます。

アルファ動物病院での最新診断技術

当院では、僧帽弁閉鎖不全症をはじめとした心臓病の早期発見と正確な診断のために、最新の検査機器を導入しています。

特に、高精細な心臓超音波検査を可能にするキヤノン製「Aplio go V」は、心臓の動きや血液の流れを詳しく確認でき、見た目にはわからないような小さな異常にも気づくことができます。

また、以下の検査も組み合わせて行うことで、より正確に愛犬の心臓の状態を把握し、その子に合った治療方針を立てることができます。

超音波検査(心エコー):弁の動きや血液の逆流がないかをリアルタイムで確認します
レントゲン検査:心臓の大きさや肺の状態をチェックします
血液検査(心臓マーカー):心臓にどのくらい負担がかかっているかを数値で把握します

こうした複数の検査を組み合わせることで、症状が出ていない段階でも、心臓の異常にいち早く気づくことにつながります。

治療と日常生活の注意点

僧帽弁閉鎖不全症は、残念ながら完治が見込める病気ではありません。
しかし、適切な治療と日々のケアを続けることで、病気の進行をゆるやかにし、愛犬との時間をより長く穏やかに過ごせる可能性があります。

治療の基本は、お薬による内科的な管理です。病気の進行度や症状に応じて、以下のような薬が処方されることがあります。

利尿剤:体内にたまった余分な水分を外に出すことで、肺や心臓への負担を軽くします
血管拡張薬:血圧を下げて、心臓が血液を送り出しやすい状態に整えます
強心薬:心臓の働きをサポートして、全身に十分な血液を届けやすくします

いずれのお薬も、「心臓にできるだけ無理をさせないようにする」ための大切な役割を担っています。症状が軽い段階から服用を始めることで、進行を抑えることが期待できます

<ご家庭での過ごし方のポイント>

治療と同じくらい大切なのが、毎日の生活の中で、心臓に負担をかけないようにする工夫です。たとえば以下のようなことを意識してみてください。

興奮させすぎない(来客時の対応や遊び方を工夫しましょう)
大きな音で驚かせない(テレビの音量や掃除機の使用などにも気配りを)
散歩はその子の体力に合わせて、無理のないペースで

また、見た目には元気そうに見えても、心臓の状態は変化していることがあります。そのため、3ヵ月に1回ほどの定期検査を受けることで、今のお薬が合っているか、症状の変化がないかなどを確認することが大切です。

特に症状が安定しているときほど、定期的なチェックが重要です。病気の進行を早めにキャッチし、治療をその都度見直していくことが、長く穏やかに過ごすためのカギとなります。

まとめ

「最近、なんだか元気がないな」「年齢のせいかな?」そんな小さな変化が、実は心臓からのSOSであることもあります。僧帽弁閉鎖不全症は進行性の病気ですが、早期に発見して、適切な治療と日々のケアを行うことで、愛犬とこれからも穏やかな時間を過ごせる可能性がある病気です。

アルファ動物病院では、高精度な検査機器と確かな診断技術を活かし、一頭一頭に合わせた治療とサポートを行っています。「少し気になる」「いつもと違う気がする」そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。

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診療時間:10:00~12:00|15:00~19:00 ※受付18:30まで
休診日:日曜・祝日
住所:東京都葛飾区高砂8-30-12
駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分
駅改札を出て、左の階段を下り、踏切のある道路を(バスが通っています)、踏切を背にしてまっすぐ歩きます。
ひとつめの信号(角に伊勢屋さんというおにぎりやさんがあります)をとおりすぎたらすぐ、道路の左側にあります。1階が駐車場、2階が病院になっています。