2024.11.08 愛犬・愛猫が発作を起こしたら?|原因と家庭でできる対応策
もし愛犬や愛猫が突然発作を起こしたら、驚きや不安でどう対応すればいいのか戸惑ってしまうかもしれません。
発作には、てんかんや中毒などさまざまな原因があり、事前にその原因や対処法を知っておくことで、いざという時にも冷静に対応することができます。
今回は、犬や猫に見られる発作の原因や特徴、そして飼い主様ができる具体的な対応について、獣医師の視点からわかりやすくお伝えします。
■目次
1.犬と猫の発作とは?
2.なぜ発作が起こるのか?主な原因について
3.緊急時に飼い主様ができること
4.診断方法|どんな検査が行われる?
5.症状と原因に応じた治療法
6.予防と日常のケア
7.まとめ
犬と猫の発作とは?
犬と猫の発作は、脳や神経系の異常により引き起こされる突然の身体反応です。発作にはさまざまな種類があり、以下のように分類されます。
<発作の種類>
・てんかん性発作
脳内での異常な電気信号の放出が原因で発生し、全身の痙攣や意識喪失などの症状を引き起こします。
てんかん性発作は、遺伝が関係する場合もありますが、脳腫瘍や脳の外傷、感染症などが原因となることもあります。
・非てんかん性発作
てんかん性ではないものの、類似の症状が現れる発作です。
例えば、心臓の問題や代謝異常、または中毒症状が引き金となることがあります。てんかんと同様の痙攣や意識変化が見られるため、見分けが難しいこともあります。
<発作中の症状>
・全身の震えや硬直
筋肉が不規則に収縮し、震えや痙攣を引き起こします。
・意識喪失や混乱
発作が始まると突然意識を失ったり、混乱した行動を取ったりすることがあります。
・唾液の過剰分泌や泡を吹く
発作中に唾液が過剰に分泌され、口から泡が出る場合があります。
・排尿や排便の失禁
発作が激しい場合、無意識に失禁することもあります。
なぜ発作が起こるのか?主な原因について
犬や猫が発作を起こす原因はさまざまで、いくつかの代表的な要因が知られています。
以下にその主な原因をご紹介します。
<てんかん>
てんかんは、犬や猫の発作の原因としてよく見られるもので、脳内の異常な電気信号や遺伝的な要因が関係しています。
・特発性てんかん
特発性てんかんは、血液検査や画像検査などでは原因を特定することが難しいものの、遺伝的な影響が疑われるタイプです。
特にゴールデンレトリバーやビーグルなど一部の犬種では、原因遺伝子は特定されていないものの、遺伝的影響が考えられています。
・構造的てんかん(症候性てんかん)
脳腫瘍や脳炎、外傷など、明確な脳の構造的な異常や病変が原因となって引き起こされるタイプのてんかんです。この場合、MRIやCTスキャンなどの画像検査によって原因を特定できることが多いです。
<中毒>
チョコレートやぶどう、薬品などの有害物質を誤って口にすると、犬や猫の神経系に影響を及ぼし、発作を引き起こすことがあります。
もしこうした有害物質に触れた可能性がある場合は、早急に動物病院に連絡することが重要です。
<脳腫瘍>
特に高齢の犬や猫に多く見られる原因で、脳に腫瘍ができると発作を引き起こすことがあります。腫瘍が進行すると、発作の頻度が増える傾向があります。
<低血糖>
若い犬や小型犬では、低血糖が発作の原因になることがあります。
エネルギー不足により脳が正常に働かなくなるため、発作が生じることがありますので、日頃から食事の間隔や内容に気をつけることが大切です。
<肝臓や腎臓の疾患>
肝臓や腎臓に問題があると有害物質が体内に蓄積しやすくなり、神経系に影響を与えることで発作が引き起こされることがあります。
このような内臓の病気が発作の原因である場合、早期の診断と治療が必要です。
緊急時に飼い主様ができること
愛犬や愛猫が発作を起こしたとき、冷静に対応することが何よりも大切です。ここでは、発作時に飼い主様が取るべき具体的な行動をご紹介します。
・安全な場所を確保する
発作中、犬や猫は意識を失ったり、無意識に体を動かしたりすることがあります。
家具や壁にぶつかってしまう可能性もあるため、周囲の障害物を片付けて、できる限り安全なスペースを確保しましょう。
・発作の時間を記録する
発作がどのくらいの時間が続くかを確認し、記録しておきましょう。
発作が短時間で治まることもありますが、もし5分以上続いたり、短時間で何度も発作が起きたりする場合は緊急事態ですので、すぐに獣医師に連絡することが大切です。
また、スマホで発作の様子を撮影しておくと、獣医師により正確な発作の状態を伝えるのに役立ちます。
・発作後の様子を見守る
発作が治まった後も、犬や猫は混乱していることが多いです。そばで優しく声をかけて安心させ、静かな環境で休ませてあげましょう。
回復に時間がかかる場合や、普段と様子が違うと感じたら、かかりつけの獣医師に相談してください。
<してはいけないこと>
無理に体を押さえつけたり、口の中に物を入れたりするのは避けましょう。犬や猫が怪我をしてしまう場合や、飼い主様が噛まれる危険があります。
また、自己判断で薬を与えることは危険ですので、必ず獣医師に相談してください。
診断方法|どんな検査が行われる?
発作の原因を突き止めるために、いくつかの検査を組み合わせて調べます。
・問診と身体検査
最初に、飼い主様からの情報が診断の大きな手がかりとなるため、発作の頻度や持続時間、発作が起きたときの状況、普段の生活習慣などを詳しくお伺いします。
・血液検査
血液検査では、発作の原因として考えられる代謝異常や感染症、肝臓や腎臓の機能低下がないかを確認します。また、低血糖などの異常も発作を引き起こす可能性があるため、あわせて調べることが重要です。
・画像検査(レントゲン、CT、MRI)
レントゲン、CT、MRIなどの画像検査では、脳や脊髄に構造的な異常がないかを確認します。
脳炎や脳腫瘍、水頭症といった病変がある場合は、これらの検査で発見できることが多く、特にMRIは脳の詳細な状態を把握するのに適しているため、てんかんなどの病気の診断において非常に重要な役割を果たします。
・尿検査
尿検査では、代謝異常や中毒、糖尿病など、発作を引き起こす可能性がある他の要因を確認します。
・脳波検査(EEG)
脳波検査では脳の電気活動を測定します。異常な電気活動が確認されると、てんかんの可能性が高くなります。
この検査は主に大学病院や高度医療施設で行われるため、一般的な診断過程には含まれないことが多いです。
症状と原因に応じた治療法
愛犬や愛猫の発作の原因に応じて、適切な治療法が選択されます。ここでは、主な治療法をご紹介します。
<薬物療法>
特発性てんかんや構造的てんかんなどが原因で発作が起きている場合、抗てんかん薬(フェノバルビタール、ゾニサミド、臭化カリウム、レベチラセタムなど)が処方されることがあります。
これらの薬は脳の異常な電気活動を抑えることで発作を予防する効果が期待できます。
ただし、長期的に管理が必要なため、副作用を抑えるためにも定期的な血液検査や健康状態の確認が欠かせません。
<酸素療法や点滴>
呼吸困難が生じている場合には酸素吸入を行い、中毒を疑う場合には点滴や解毒剤の投与を行います。
特に中毒が原因で発作が起きている場合、迅速な処置が必要です。
<手術>
脳腫瘍や脳内に物理的な問題がある場合には、手術が選択肢になることがあります。
特に腫瘍が原因で発作が繰り返し起こる場合、腫瘍を取り除くことが発作を抑えるための唯一の治療法になることがあります。
<食事療法>
代謝異常や糖尿病が原因で発作が生じている場合は、食事内容の見直しや栄養管理が必要になります。こうした治療を通じて、発作の頻度や重症度が改善することが期待されます。
予防と日常のケア
愛犬や愛猫の発作を完全に予防することは難しいですが、日々のケアで発作のリスクを減らし、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
まず、定期的な健康診断を受けることが予防の第一歩です。定期的に診断を行うことで、病気や異常を早期に発見でき、特にてんかんや代謝異常が心配される場合には血液検査や画像検査で健康状態を詳しく把握することができます。
また、栄養バランスの整った食事も重要です。適切な食事は全身の健康を支える基盤であり、肥満を防ぐことで病気のリスクを減らします。食事とともに、適切な体重管理を心がけましょう。
さらに、ストレスを軽減する環境作りも欠かせません。ストレスは発作の引き金になることもあるため、リラックスできるスペースを用意し、急な環境の変化を避けるようにしましょう。
適度な運動も健康維持に役立ちますが、無理をさせないことがポイントです。過度な運動は逆にストレスになることもあるため、愛犬や愛猫の体力に合った運動量を心がけましょう。
こうした日常のケアが健康な生活を支える要素になります。
万が一発作が起きた場合に備え、対応方法をしっかり把握しておくことも大切です。いざという時に落ち着いて対処できるよう、緊急時の対応を頭に入れておくと安心です。
まとめ
愛犬や愛猫が発作を起こすと、とても不安になると思いますが、発作は体からの大切なサインです。
原因はさまざまですが、必ずしも防げるものではありませんが、定期的な健康診断や日常のケアで発作のリスクを減らし、毎日をより快適にしてあげることができます。
発作が起きたときには、まずは深呼吸して冷静に対応し、動物病院に相談しましょう。
日常のケアをしっかり行い、愛犬や愛猫がいつも安心して過ごせるようにサポートしていきましょう。
■当院の診療案内はこちら
葛飾区高砂にある【アルファ動物病院】
TEL:03-3609-6304
診療時間:10:00~12:00|15:00~19:00 ※受付18:30まで
休診日:日曜・祝日
住所:東京都葛飾区高砂8-30-12
駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分
駅改札を出て、左の階段を下り、踏切のある道路を(バスが通っています)、踏切を背にしてまっすぐ歩きます。
ひとつめの信号(角に伊勢屋さんというおにぎりやさんがあります)をとおりすぎたらすぐ、道路の左側にあります。1階が駐車場、2階が病院になっています。