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2024.09.27 犬と猫の心筋症|咳や呼吸困難の原因は?心筋症かも

愛犬や愛猫が元気に過ごしている姿を見ていると、飼い主様も安心しますよね。ただ、見た目は健康そうでも、実は心臓に負担がかかっていることがあります。

特に心筋症は、気づかれにくい病気の一つで、初期段階ではほとんど症状が出ないため、発見したときにはすでに進行していることも珍しくありません。

今回は、犬と猫の心筋症について、どのような病気なのか、どのような症状が現れるのか、そしてどのように対処すればよいのかを詳しく解説します。

■目次
1.心筋症とは
2.心筋症の症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.まとめ

 

心筋症とは

心筋症とは、心臓の筋肉である心筋が異常をきたし、心臓が正常に血液を全身に送り出すことができなくなる病気です。
心筋の異常は、心筋が薄くなったり、逆に厚くなったりすることで発生し、その影響で心臓の機能が低下してしまいます。
心筋症は進行性の病気で、放置すると症状が徐々に悪化し、最終的には命に関わる深刻な状態になることもあります。

心筋症には主に「拡張型心筋症」と「肥大型心筋症」の二つのタイプがあります。

 

拡張型心筋症

犬に多く見られる拡張型心筋症は、心筋が薄く伸びてしまうことで、心臓が十分に収縮できなくなる病気です。これにより、心臓が全身に送り出す血液の量が不足し、疲れやすくなり、運動を嫌がるようになることがあります。
特に大型犬やスパニエル種に多く見られ、遺伝的な要因が関与していると考えられています。

 

肥大型心筋症

猫に多く見られる肥大型心筋症は、心筋が異常に厚くなり、心臓の内腔が狭くなってしまう病気です。この影響で血液の流れが悪くなり、心臓の機能が低下してしまいます。
特にメインクーンやアメリカン・ショートヘア、ラグドールなどの猫種に多く見られますが、日本猫にも発症することがあります。
また、肥大型心筋症は血栓ができやすく、後ろ足の動脈が詰まる「動脈血栓栓塞症」を引き起こしやすいという特徴もあります。

 

心筋症の症状

心筋症の症状は、初期段階では非常にわかりにくく、飼い主様が気づく頃にはすでに病気が進行していることがよくあります。
心筋症が進むと、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなるため、様々な症状が現れてきます。

以下のような症状が見られる場合、心筋症の可能性を考える必要があります。

元気がなくなる:以前は活発だったのに、最近は遊びたがらない、動きたがらないなど、エネルギーレベルの低下が見られます。
食欲不振:食事への興味を失い、食べる量が減ってしまうことがあります。特に、普段は食欲旺盛な子が突然食べなくなる場合は注意が必要です。
咳や呼吸困難:心筋症が進行すると、咳が出る、呼吸が浅くなったり速くなったりするなどがあります。特に、呼吸が苦しそうに見える場合は、早急に動物病院で診察を受けることが大切です。
運動を嫌がる:散歩や遊びを嫌がり、動きたがらなくなることが特徴です。これは、心臓が血液をうまく送り出せず、体が疲れやすくなっているためです。
突然の麻痺や失神:特に猫の場合、血栓が原因で後ろ足に麻痺が生じることがあります。このような症状が現れた場合は、緊急事態と考えて速やかに獣医師の診察を受ける必要があります。

これらの症状は他の病気でも見られることがありますが、特に心筋症が疑われる場合は早期の対応が命を救う鍵となります。

 

原因

心筋症の原因は、犬と猫で異なる場合がありますが、まだ完全には解明されていないことが多いです。しかし、いくつかの要因が関与していると考えられています。

<犬の拡張型心筋症の原因>

犬の拡張型心筋症は、主に遺伝的な要因が関係しているとされています。特にドーベルマンやボクサー、アイリッシュ・ウルフハウンド、スパニエル種といった大型犬では、発症リスクが高いことが知られています。
これらの犬種は、心筋が薄くなる遺伝的な傾向があり、その結果、拡張型心筋症を発症しやすいと考えられています。
また、いくつかの研究では、心筋の代謝異常や栄養素の不足、たとえばタウリンやL-カルニチンの欠乏が、心筋症の発症に関与している可能性が指摘されていますが、まだ確定的な結論には至っていません。

 

<猫の肥大型心筋症の原因>

猫の肥大型心筋症も、遺伝的な要因が大きく影響していると考えられています。特にメインクーンやアメリカン・ショートヘア、ラグドールなどの猫種でよく見られます。これらの猫種は、心筋が異常に厚くなる傾向があり、肥大型心筋症を発症しやすいとされています。
また、甲状腺機能亢進症や高血圧といった内分泌疾患が原因で肥大型心筋症が引き起こされることもあります。これらの病気が心筋に負担をかけ、結果として心筋症を発症させることがあります。
ただし、肥大型心筋症は、日本猫などの雑種の猫にも見られることがあり、特定の猫種だけに限られる病気ではありません。遺伝や健康状態に加えて、飼育環境や栄養状態も影響する可能性があるため、日頃からの健康管理が大切です。

 

診断方法

心筋症の診断は、心臓の状態を正確に把握するために非常に重要です。診断にはいくつかの検査が必要であり、これにより心筋症のタイプや進行度を特定することができます。

身体検査

心拍の異常や心雑音、呼吸の状態などをチェックし、聴診器を使って心臓の音を確認します。

 

レントゲン検査

心臓の大きさや形、肺の状態を確認します。また、肺水腫や胸水の有無も確認できます。

 

超音波検査(エコー)

超音波検査は、心筋症の診断において非常に重要な検査です。リアルタイムで心臓の動きを観察し、心筋の厚さや収縮力、心臓内の血液の流れを詳しく評価します。特に肥大型心筋症の場合、心筋の肥厚が詳細に確認できます。

 

血液検査

血液検査では、心筋の健康状態や他の臓器への影響を調べます。また、心筋症に関連する他の疾患(例:甲状腺機能亢進症)を確認するためにも行われます。

 

治療方法

心筋症の治療は、病気を完全に治すことではなく、進行を抑えながら症状を緩和することを目的としています。
主な治療方法は以下のとおりです。

薬物療法

心筋症の治療で最も一般的なのが薬物療法です。拡張型心筋症には、心臓の収縮力をサポートする薬が使われます。
一方、肥大型心筋症では、心臓への負担を軽減する薬が処方されます。また、心臓の負担を減らすために、利尿剤やACE阻害薬が併用されることもあります。

 

定期的な検査

心筋症は進行する病気なので、定期的な検査が欠かせません。定期的にエコー検査や血液検査を行い、治療の効果を確認しつつ、必要に応じて治療計画を調整します。

 

生活管理

適度な運動とバランスの取れた食事も重要です。運動量を適切に管理し、ストレスを避けることが心筋症の管理に役立ちます。
また、体重管理も大切で、肥満は心臓に大きな負担をかけるため、注意が必要です。

 

まとめ

心筋症は、愛犬や愛猫にとって命に関わる深刻な病気です。初期段階では症状がわかりにくいため、日常的に健康チェックを行い、定期的に健康診断を受けることが早期発見と適切な治療への鍵となります。
心筋症の発見が遅れると、愛犬や愛猫に大きな負担がかかることになります。病気が進行する前に、少なくとも年に一度、特に高齢の場合は半年に一度は心臓の検査を受けることをお勧めします。
また、心筋症と診断された場合は、獣医師と相談しながら、最適な治療プランを立て、愛犬や愛猫の生活の質を保つことが大切です。

 

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