2025.06.09 しこり? できもの? 犬・猫の皮下腫瘍|良性・悪性の違いと受診の目安
犬や猫の体を撫でていて、ふと「しこりのようなもの」に気づいたことはありませんか?
皮膚の下にできるしこりには、様子を見てよいものもあれば、早めの治療が必要なものもあります。
今回は、犬や猫にみられる皮下腫瘍の代表例や良性・悪性の見分け方、受診の目安、診断・治療の流れについて解説します。
■目次
1.皮下腫瘍とは?よくある「しこり」の正体
2.良性?悪性?皮下腫瘍の見分け方と気をつけたいサイン
3.診断の流れと治療の選択肢
4.日常ケアと早期発見のポイント
5.まとめ
皮下腫瘍とは?よくある「しこり」の正体
皮膚や皮下にできるしこりは、単なる炎症から腫瘍、液体が溜まった嚢胞までさまざまな原因があります。このうち「腫瘍」は、細胞が異常に増殖してできるかたまりで、良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分けられます。腫瘍は中齢~高齢で発生率が高くなるのが一般的です。
<主な皮下腫瘍の種類>
・脂肪腫
皮膚の下にやわらかい脂肪のかたまりができる良性腫瘍です。ゆっくりと大きくなり、多くの場合は無治療で経過を観察しますが、必要に応じて手術を行います。
・乳頭腫・皮脂腺腫
いわゆる「イボ」と呼ばれるものです。乳頭腫は白くてカリフラワー状の形をしており、ウイルス(パピローマウイルス)の関与が疑われます。皮脂腺腫はドーム状で、皮脂腺の細胞が増殖してできます。いずれも良性です。
・肥満細胞腫
免疫に関係する「肥満細胞」が異常に増えた腫瘍で、悪性腫瘍のひとつです。中高齢に多いとされていますが、若齢でみられることもあります。腫瘍が放出する物質の影響で、嘔吐や下痢などを引き起こす場合もあります。
・乳腺腫瘍
乳腺にできる腫瘍で、乳腺の1箇所もしくは複数箇所にしこりができます。避妊手術を受けていないメスに多く見られます。良性と悪性の場合があり、見た目では判断できないため、外科手術で摘出し病理検査を行います。
良性?悪性?皮下腫瘍の見分け方と気をつけたいサイン
しこりの見た目や触ったときの感触には、良性・悪性による傾向がありますが、必ずしも当てはまるとは限りません。あくまで目安として捉え、必ず獣医師の検査によって判断することが必要です。
<良性腫瘍に多い特徴>
・ゆっくりと大きくなる
・手で押すと動く
<悪性腫瘍に多い特徴>
・急激に大きくなる
・手で押しても動かない
・赤み、出血、ただれがある
・元気や食欲の低下、嘔吐など全身状態の変化がある
特に、急激に大きくなる、出血する、体調に変化があるなどの場合には、早めの受診をおすすめします。
診断の流れと治療の選択肢
皮下腫瘍が見つかった場合、その性質によって対応は大きく変わります。ここでは、診断までの流れと、良性・悪性それぞれに対する治療方針についてご紹介します。
<検査と診断>
まずは獣医師が問診と触診を行い、しこりの大きさや硬さ、位置などを確認します。そのうえで、必要に応じて以下のような検査を実施します。
・細胞診
細い針でしこりから細胞を採取し、顕微鏡で確認する検査です。麻酔が不要で身体への負担も少ない一方、採取できる細胞の範囲が限られるため、診断がつかないこともあります。
・組織検査(病理検査)
しこりの一部または全部を外科的に切除し、詳しく調べる検査です。確定診断に有効ですが、全身麻酔が必要となるため、体調や経過をふまえて慎重に検討されます。
<良性腫瘍の場合の治療>
良性と診断された場合は、基本的に心配の少ない経過が期待されます。以下のような治療方針が取られます。
・外科的切除が基本
良性腫瘍は転移や再発のリスクが低いため、多くの場合、外科手術でしこりを切除すれば治療は完了します。
・経過観察を選ぶことも
しこりの場所や大きさ、動物の年齢・体調によっては、無理に切除せず様子を見ることもあります。経過観察を選ぶ場合でも、定期的な診察で状態を確認することが大切です。
<悪性腫瘍の場合の治療>
悪性腫瘍は再発や転移のリスクを伴うため、積極的かつ継続的な治療と経過観察が必要になります。
・早期の手術が重要
可能な限り腫瘍を切除するため、できるだけ早期に外科手術を行うことが推奨されます。
・術後の経過観察が必須
術後も継続的な診察や検査を行い、再発や転移がないか慎重に見守る必要があります。
・補助的な治療を併用することも
腫瘍の種類や進行度によっては、抗がん剤や放射線治療を併用する場合があります。治療内容は体調やリスクを考慮して個別に判断されます。
皮下腫瘍は一見して良性か悪性かを見分けるのが難しいため、気になるしこりに気づいた際は、早めに動物病院での診察を受けることが大切です。
日常ケアと早期発見のポイント
犬や猫の皮下腫瘍は、飼い主様による日々のスキンシップの中で見つかることが少なくありません。「なんとなく撫でていたら、いつもと違う感触があった」そんな小さな違和感が、病気の早期発見につながることもあるのです。
<ご自宅でできるチェックの工夫>
愛犬・愛猫の体をなでるときは、以下のような点に気をつけてみてください。
・頭・首・背中・お腹・お尻まわりをやさしくなでる
一方向に手を滑らせることで、普段とは異なる感触に気づきやすくなります。
・定期的なブラッシングを取り入れる
毛に隠れたしこりを見つけやすくなるうえ、皮膚の状態の把握にも役立ちます。
<定期健診で全身チェックを>
体の内側や、目では確認しづらい部分の変化に気づくには、動物病院での定期的な健康診断が有効です。特にお腹やお尻まわりなど、家庭では見落としがちな箇所も、獣医師が丁寧に確認します。
皮下腫瘍は、たとえ悪性でも早期に見つけることで治療の選択肢が広がるケースが少なくありません。ご自宅でのふれあいと、病院での定期チェック、その両方が大切な愛犬・愛猫の健康を守る第一歩です。
まとめ
犬や猫の皮下腫瘍には、良性で経過観察が可能なものから、早期の治療が必要な悪性腫瘍までさまざまなタイプがあります。見た目や触感だけでは判断できないことも多く「大丈夫だろう」と様子を見ているうちに進行してしまうケースも少なくありません。
だからこそ、気づいたときに相談することが何より大切です。小さなしこりのうちに受診しておけば、それが早期発見・早期治療につながり、愛犬・愛猫の負担を最小限に抑えられるかもしれません。「これって大丈夫かな?」と迷ったときは、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
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