2025.05.29 犬のふるえ・おなかの膨らみ、“年のせい”だけではないかも|クッシング症候群に注意
愛犬のふるえや、おなかの膨らみ。「年齢のせいかな」と見過ごしていませんか?
実はこうした変化は、犬に多く見られる「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」のサインかもしれません。
この病気は、症状があいまいで老化と混同されやすい一方、放っておくとじわじわと進行してしまいます。だからこそ、早期に異変に気づき、適切なケアを行うことが何よりも大切です。
今回は、クッシング症候群の症状・診断・治療について解説します。
■目次
1.クッシング症候群とは?
2.主な症状|「老化かな?」と思ってしまう変化に注意
3.診断の流れ
4.治療とこれからの過ごし方|穏やかな毎日のためにできること
5.まとめ
クッシング症候群とは?
クッシング症候群は、体内で副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌されることで起こる病気です。
このホルモンは、代謝や免疫、ストレスへの対応など、健康維持に欠かせないものですが、過剰になると体のあちこちに異常が現れます。
「副腎皮質機能亢進症」という名称でも知られており、慢性的にホルモンのバランスが乱れることで症状が進行していきます。
<発症しやすい年齢や犬種>
中高齢(特に10歳以上)の犬に多く見られ、以下のような犬種では発症リスクが高いとされています。
・トイ・プードル
・ミニチュア・ダックスフンド
・ビーグル など
脳下垂体や副腎にできた腫瘍が原因となるケースもあり、見た目に現れる変化だけで判断するのが難しい病気です。
主な症状|「老化かな?」と思ってしまう変化に注意
クッシング症候群では、以下のような症状がよく見られます。
・水をたくさん飲む・尿の量が増える(多飲多尿)
・おなかがぽっこりと膨らむ(腹部膨満)
・毛が抜ける
・皮膚が薄くなる
・歩くときにふるえる
・元気がない
どれも一見すると「年を取ったからかな」と思ってしまいがちですが、これらの変化の背景には、副腎ホルモンの異常が隠れていることがあります。特に「おなかが不自然に膨らんできた」「毛ヅヤが急に悪くなった」などの変化が見られた場合は、注意が必要です。
日々のちょっとした違和感こそが、病気の初期サインかもしれません。「いつもと違う」と感じたら、どうかその感覚を大切にしてください。些細なことでもためらわずに動物病院に相談しましょう。
診断の流れ
まずは症状の確認、身体検査、血液検査などを通じて、全身の状態をチェックします。
クッシング症候群が疑われる場合は、さらに以下のようなホルモン検査で確定診断を行います。
<確定診断に使われる検査>
・ACTH刺激試験:副腎がどの程度ホルモンを分泌できるかを調べます。
・低用量デキサメタゾン抑制試験:副腎がホルモンを適切に制御できているかを調べます。
これらの検査結果から「下垂体性」か「副腎性」かなど、病気のタイプを見極めることができます。当院では、これらのホルモン検査に対応した専用の測定機器を導入しており、より正確でスムーズな診断が可能です。
治療とこれからの過ごし方|穏やかな毎日のためにできること
クッシング症候群の治療は、現在のところ主に内科的な治療(お薬の服用)が中心です。副腎から分泌されるホルモン(コルチゾール)の過剰な分泌を抑える薬を使用することで、症状の進行を抑えていきます。
治療を始めて数週間ほどで「水を飲む量が減った」「毛が少しずつ生えてきた」など、少しずつ変化が見られることもあります。焦らず、ひとつひとつの改善を積み重ねていくことが大切です。
<薬の管理と副作用チェックが重要>
ホルモンに関わるお薬は体への影響が大きいため、細やかな観察と継続的な通院が不可欠です。また、飼い主様の日々の気づきが、治療の質と安心感の大きな支えになります。
例えば次のような点を心がけましょう。
・決められた時間にきちんとお薬を飲ませる
・食欲・元気・排泄など、いつもと違う様子がないかをよく観察する
・定期的に通院し、血液検査でお薬の効果や副作用をチェックする
こうした積み重ねが、愛犬の穏やかな日々を支える何よりのケアになります。
<クッシング症候群の予後と向き合い方>
クッシング症候群は、完治が難しい病気ではありますが、早期に気づき、適切な治療を続けていけば、症状をうまくコントロールしながら快適に過ごすことができます。
実際に、多くの犬が数年にわたり安定した生活を送り「元気に過ごしてくれている」と感じる飼い主様も少なくありません。「余命」という言葉にとらわれすぎず、今この瞬間にできることを丁寧に重ねていくことが大切です。
まとめ
クッシング症候群は、見た目だけではわかりにくいため「年のせいかな」と見逃されやすい病気です。けれど、飼い主様の「ちょっとおかしいな」という気づきが、病気の進行を防ぐ大きなきっかけになります。
気になる変化があれば、ぜひ早めにご相談ください。当院では、丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけながら、愛犬と飼い主様にとって最善の方法を一緒に考えてまいります。
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住所:東京都葛飾区高砂8-30-12
駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
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