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2025.04.28  5歳からの定期検査が命を守る!|犬の肝臓トラブル完全ガイド

肝臓は、犬の体の中で「化学工場」のような働きを担っている、とても大切な臓器です。栄養の代謝や毒素の分解、ホルモンの調整、血液の浄化など、健康を保つために欠かせない役割を果たしています。

しかし肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、かなり悪化するまで目立った症状が出にくい特徴があります。そのため、飼い主様が異変に気づいたときには、すでに病気が進行してしまっているケースも少なくありません。近年は犬の寿命が延びていることもあり、肝臓のトラブルは年々増加傾向にあります。

今回は、愛犬の健康を守るために知っておきたい肝臓の病気と、その対策について詳しくご紹介します。

■目次
1.5歳を過ぎたら定期検査を|早期発見が健康寿命のカギ
2.犬の肝臓病にはどんな種類がある?
3.肝臓病を早期発見するための検査とは?
4.犬の肝臓病の治療と食事管理のポイント
5.日常のケアと肝臓病との上手な付き合い方
6.まとめ|肝臓病は「早期発見」と「継続的なケア」が何より大切

5歳を過ぎたら定期検査を|早期発見が健康寿命のカギ

当院では、5歳を過ぎたら半年に一度の定期検査(血液検査と腹部超音波検査)をおすすめしています。

肝臓病は、早期に発見できれば治療効果が高く、進行を抑えることが可能です。逆に、症状が出てから治療を始めるケースでは、すでに肝臓の機能が大きく損なわれてしまっていることも珍しくありません。

愛犬の健康寿命を延ばすためには、症状が出る前に病気の兆候を捉えることが大切です。定期検査を受けることで、見た目にはわからない体内の変化を「数値」や「画像」で確認することができます。

犬の肝臓病にはどんな種類がある?

犬の肝臓病にはいくつか種類があり、それぞれ原因や症状が異なります。

急性肝炎:細菌やウイルス、中毒などによって急激に炎症が起こる病気
慢性肝炎:長期間にわたり肝臓に炎症が続く状態
肝硬変:肝臓が硬くなり、機能が大きく低下してしまった状態
肝臓腫瘍:肝臓に良性または悪性の腫瘍ができる状態

肝臓は「予備能力」がとても高いため、かなり進行するまで症状が出ないことが多いのが特徴です。

<肝臓病が進行すると見られる主な症状>

黄疸(歯ぐきや白目が黄色くなる)
嘔吐や下痢
お腹が膨らむ(腹水)
体重減少
ぐったりする、元気がない

これらの症状が見られる場合は、早急な受診が必要です。

肝臓病を早期発見するための検査とは?

犬の肝臓病は、症状が出にくい分、検査によっていかに早く異常を見つけられるかがとても大切になります。特に、肝臓の状態を詳しく調べるうえで役立つのが「腹部超音波検査」と「血液検査」です。

<超音波検査(エコー検査)でわかること>

腹部超音波検査は、痛みや負担が少ない安全な検査で、定期的に行いやすいのが特徴です。肝臓に専用のプローブをあて、リアルタイムで内部の状態を画像として確認できます。

具体的には次のようなことがわかります。

肝臓の大きさや形に異常がないか
腫瘍や結節(こぶ)の有無
血流の状態
肝臓の内部に炎症や線維化(硬くなる変化)がないか

症状が出ていない初期の段階でも、超音波検査で小さな異変に気づけることがあります。

<血液検査でわかること>

血液検査では、肝臓の機能を数値でチェックできます。肝酵素と呼ばれる以下の数値を中心に評価します。

検査項目 チェックポイント
ALT・AST 肝臓の細胞にダメージがあると上昇しやすい
ALP・GGT 胆道や胆管の異常があると上昇しやすい
総ビリルビン 黄疸の有無や胆汁の流れを確認
アンモニア濃度 肝機能が低下すると数値が上がりやすい

これらの数値は、それぞれ異なる異常を示すサインになるため、肝臓の状態を総合的に判断するうえで非常に重要です。

<5歳を過ぎたら「半年に1回」の定期検査がすすめられる理由>

5歳を過ぎると、肝臓に少しずつ負担や変化が現れはじめることが多くなります。特にシニア期に入ると、体調の変化が緩やかに進行することが多いため、半年に1回の検査を行うことで次のようなメリットがあります。

まだ症状が出ていない段階で異常に気づける
前回の検査結果と比較して「変化」に気づきやすい
肝臓の腫瘍や線維化なども早期発見が可能

肝臓病は早期に発見できればできるほど、治療の選択肢が広がり、愛犬の体への負担を軽減することにつながります。早期発見によって治療費や通院回数を抑えることができたり、重い病気への進行を防げたりする点で、定期検査は非常に費用対効果の高い健康管理といえます。

犬の肝臓病の治療と食事管理のポイント

肝臓病の治療は、その原因や症状によって方法が大きく異なります。治療の基本は、肝臓への負担を軽減しながら、できるだけ肝機能を維持・回復させていくことです。

<肝臓病の治療アプローチ>

多くの場合、まずは肝臓を守る薬(肝保護剤)や、炎症を抑える薬を使った薬物療法が行われます。感染症が原因であれば抗生物質、中毒が原因の場合は解毒処置、腫瘍がある場合は外科手術や抗がん剤による治療が必要になることもあります。

治療期間中は、薬の効果や副作用の有無を確認するために定期的な再検査がとても重要です。検査結果をもとに薬の量や種類を調整し、愛犬にとって最適な治療を続けていきます。獣医師とのこまめな連携を続けていくことが大切です。

<肝臓病の犬に適した食事管理>

治療と並行して、食事管理も肝臓への負担を減らす大切なポイントです。肝臓にやさしい食事内容と、与え方の工夫をご紹介します。

▼肝臓にやさしい食事内容
・良質なたんぱく質を適量含む(低たんぱく食が基本)
・塩分(ナトリウム)は控えめに
・良質な脂肪(魚や動物性脂肪など)を適度に含む

▼避けたい食品
・高脂肪の食事や脂っこいおやつ
・人間の食べ物
・ジャーキーや加工食品など添加物の多いもの

▼与え方の工夫
・1回の量を少なめにし、1日数回に分けて与える
・常に新鮮な水を用意する
・獣医師の指導のもと、肝臓サポート用の療法食を活用する

食事は治療と同じくらい大切なケアのひとつです。愛犬の体調や食欲に合わせて、無理のない方法で管理していきましょう。

日常のケアと肝臓病との上手な付き合い方

肝臓病と向き合いながら、愛犬が元気に過ごせるようにするには、日常生活でのちょっとした配慮がとても大切です。

<肝臓に負担をかけない生活習慣>

脂質や添加物の多い食事・おやつは控えめにし、誤食や有害物質(人間用の薬や洗剤など)に注意しましょう。無理のない運動や、ストレスの少ない環境づくりも肝臓への負担軽減につながります。

また、市販のサプリメントには肝臓の健康維持をサポートするものもありますが、成分や用量によっては肝臓に負担をかけるものもあります。サプリメントを取り入れる場合は、必ず獣医師に相談してから使用しましょう。

<飼い主様が日頃からチェックしたいポイント>

食欲や元気の有無
体重の変化
排泄の様子(尿や便の色・量)
嘔吐や下痢の有無

こうした日々の小さな変化に気づくことが、早めの対応に役立ちます。

肝臓病は長期的に付き合っていく必要がある病気です。症状が落ち着いているときでも、半年に一度の血液検査や腹部超音波検査を習慣化することで、病気の進行を早めにキャッチし、治療内容を見直すことができます。

まとめ|肝臓病は「早期発見」と「継続的なケア」が何より大切

犬の肝臓は非常に働き者の臓器ですが、症状が出にくいため見過ごされやすいのが現実です。だからこそ、5歳を過ぎたら定期検査を受け、早期に異常を発見することが愛犬の健康を守る大きなカギになります。当院では充実した設備を整え、皆さまをお待ちしております。どうぞお気軽にご相談ください。

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