2025.04.22 若い犬も注意が必要な背中の病気|ダックスやコーギーに多い椎間板ヘルニア
「ヘルニアは年をとってからの病気」と思われがちですが、実は若い犬でも注意が必要です。特にミニチュアダックスフンドやコーギーなどでは、4〜6歳の若齢期に発症するケースも多く見られます。
犬の椎間板ヘルニアは、背骨のクッションである“椎間板”が飛び出し、神経を圧迫することで痛みや麻痺を引き起こす病気です。遺伝的な体質も関係しているため、注意していても発症することがあります。
背中の異変は見逃されやすいものですが、早期に気づいて対応すれば、進行や再発のリスクを抑えられる可能性があります。
今回は、椎間板ヘルニアの原因・症状・治療や日常ケアのポイントについて、獣医師の視点からご紹介します。
■目次
1.椎間板ヘルニアになりやすい犬種と原因
2.椎間板ヘルニアの症状|こんな変化は見逃さないで
3.診断と治療について
4.ご家庭でできる予防とケアのポイント
5.まとめ
椎間板ヘルニアになりやすい犬種と原因
椎間板ヘルニアの発症リスクが高いのは、以下のような犬種です。
・ミニチュアダックスフンド
・コーギー
・フレンチブルドッグ
・ビーグル
・シーズー
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・ペキニーズ など
これらの犬種は「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれ、椎間板の変性が若いうちから進みやすい体質を持っています。また、胴が長く足が短い体型や、活発に動き回る性格も、背骨への負担を増やす要因となります。
ヘルニアの原因には、次のようなものがあります。
・ソファや階段など高い場所から飛び降りたときの強い衝撃
・日々の生活の中で背中に少しずつかかる負担の積み重ね
・体重増加や肥満によって背中にかかる負担が大きくなること
こうしたことがきっかけで、椎間板が飛び出してしまうことがあります。特に体重管理は重要なポイントで、肥満は椎間板ヘルニアの大きなリスク要因となります。
椎間板ヘルニアの症状|こんな変化は見逃さないで
症状は段階的に進行し、初期には「なんとなくおかしい」と感じる程度のことも多く、見逃されがちです。以下のような行動の変化に気づいた場合は注意が必要です。
・歩き方がぎこちない、ふらつく
・背中や腰を触ると嫌がる、怒る
・お座りや伏せの姿勢が不自然になる
・ジャンプをためらうようになる
・尻尾を下げていることが多い
進行すると、後ろ足の麻痺や排尿・排便のコントロールが難しくなるといった、重い症状が急に現れることもあります。「後ろ足が動かない」などの急激な変化が見られた場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
診断と治療について
椎間板ヘルニアは、症状の重さによって治療方法が大きく変わる病気です。正確な診断と、適切な治療方針を立てることが何よりも大切です。
<正確な診断のために大切な検査とは?>
まず、身体検査や神経の反応を確認する「神経学的検査」で、おおよその部位や重症度を見極めます。さらに詳しく状態を調べるために行われるのが、脊髄造影検査やMRI検査です。
・脊髄造影検査:造影剤を使って脊髄の輪郭を映し出し、神経が圧迫されている箇所を把握
・MRI検査:骨や神経、椎間板などの軟部組織を立体的に詳しく確認
<獣医師に伝えていただきたい大切な情報>
診断の精度を高めるためには、飼い主様からの情報がとても重要です。以下のような点を教えていただけると、診断の手がかりになります。
・「いつから」「どのような」症状が出始めたか(経過)
・症状が出る前に思い当たるきっかけはあったか(高い所からのジャンプなど)
・食欲や排泄の様子、普段の生活での変化(散歩を嫌がる、ジャンプを避ける、など)
・ご自宅の環境(ケージの有無、段差の有無など)
<治療について>
椎間板ヘルニアの治療法は、症状の重さに応じて変わります。
症状の程度によって「保存的治療」と「外科的治療」のいずれか、あるいは両方を組み合わせて行います。
【軽度〜中等度の場合|保存的治療】
症状が軽い場合は、お薬や安静、リハビリテーションを中心とした「保存的治療」が基本です。
・薬物療法:痛みや炎症を抑えるお薬を処方します
・安静管理:必要に応じてケージで過ごすなど、背中に負担をかけない生活を整えます
・リハビリ:症状が落ち着いてきたら、筋力を落とさないようリハビリも検討します
これらを丁寧に続けることで、神経への圧迫が自然におさまり、回復を目指せるケースもあります。
【重度の場合|外科的治療が必要になることも】
後ろ足が動かない、排尿・排便ができないなどの重い症状がある場合は、外科的な治療(手術)が必要になることがあります。
このようなケースでは、手術によって飛び出した椎間板物質を除去し、神経の圧迫を取り除くことが目的となります。
当院では、手術が必要と判断された場合は、専門医と連携しながら適切な医療を受けていただけるようサポートいたします。
ご家庭でできる予防とケアのポイント
椎間板ヘルニアは、遺伝的な体質が関係するため、完全に防ぐことは難しい病気です。それでも、毎日の暮らしの中でできる工夫によって、発症や再発のリスクを減らすことができます。
<体重管理と適度な運動を意識>
体重が増えると、背骨や椎間板にかかる負担が大きくなります。特に胴長短足の犬種は、背中に負荷がかかりやすいため、適正体重の維持がとても重要です。
また、運動不足は筋力の低下につながり、姿勢のバランスが崩れたり、関節に余計な負担がかかったりすることもあります。とはいえ、激しい運動はかえってリスクになるため、お散歩や室内でのゆったりした動きなど、負担の少ない運動を毎日の習慣にすることが大切です。
<生活環境の見直しで背中への負担を軽減>
ご自宅の環境を少し工夫するだけでも、愛犬の背中にかかる負担を減らすことができます。
・フローリングに滑り止めマットを敷く
・ソファやベッドにはスロープを設置する
・抱っこは胴をしっかり支えるように持ち上げる
・ジャンプを促すような遊びは控えめにする
こうした小さな工夫の積み重ねが、椎間板への衝撃を減らすことにつながります。
<再発を防ぐための継続的なケア>
椎間板ヘルニアは、一度発症すると再発しやすい病気です。症状が落ち着いているときほど、継続的なケアを意識することが大切です。
「今は元気だから大丈夫」と思っていても、無理な動作の積み重ねが再発のきっかけになることもあります。日々の体重の維持、生活環境の整備を続けながら、愛犬の健康を見守っていきましょう。
まとめ
椎間板ヘルニアは、遺伝的な要因に加え、日常のちょっとした動作や生活環境がきっかけで発症することがあります。特にミニチュアダックスフンドやコーギーなどの犬種では、若いうちから注意が必要です。「なんとなく元気がない」「動き方がいつもと違う」そんな変化があったときは、ぜひそのままにせず、早めに動物病院にご相談することをおすすめします。
当院では、丁寧な診察とご家族へのヒアリングをもとに、その子に合った治療や生活アドバイスを大切にしています。気になることがあれば、ぜひお気軽にご来院ください。
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