2024.11.26 犬と猫の糖尿病とは?|早期発見のポイントと日常管理の重要性
犬や猫の糖尿病は、近年増加傾向にある内分泌疾患の一つで、体内でインスリンの分泌やその作用に問題が生じることで、血糖値のコントロールが正常に行えなくなる病気です。
糖尿病は進行するとさまざまな健康リスクを伴います。しかし、早期に発見して治療を始めれば、合併症を防ぎ、血糖値を安定させることが期待できます。
今回は、犬や猫の糖尿病について、症状、治療法、そして日常生活での注意点を詳しく説明します。
■目次
1.犬と猫の糖尿病の違い
2.見逃してはいけない初期症状
3.診断と検査について
4.治療方法と日常のケア方法
5.日常生活での注意点
6.糖尿病予防と健康管理のポイント
7.まとめ
犬と猫の糖尿病の違い
犬と猫では、糖尿病の発症メカニズムやリスクとなる要因に違いがあります。
<犬の糖尿病>
犬の場合、糖尿病は主にⅠ型(インスリン依存性)で、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンがほとんど分泌されなくなることが原因です。特に中年以降の避妊済みのメスで発生することが多いとされています。
<猫の糖尿病>
一方、猫の糖尿病は主にⅡ型(インスリン非依存性)で、インスリン抵抗性やインスリン分泌不全が原因となります。中高齢の去勢済みのオスに多く見られる傾向があります。
さらに、猫の場合は肥満がⅡ型糖尿病の大きなリスク因子となります。
体重が増えすぎるとインスリンの働きが低下し、血糖値が上昇しやすくなるため、適正体重を維持することが糖尿病の予防と管理において非常に重要です。
見逃してはいけない初期症状
糖尿病の初期には、愛犬や愛猫に以下のような変化が現れることがあります。
・多飲多尿:水を飲む量が増え、排尿の回数や量が多くなる。
・多食:食欲が増える一方で体重が減少する。
犬の場合、これらの症状に加えて白内障が見られることが特徴的です。白内障が進行すると、目が白く濁り、視力が低下してしまいます。
一方、猫では後肢の衰弱が現れることがあり、足の裏全体を床につけて歩く姿勢が糖尿病の初期に見られるサインとして知られています。
これらの症状に気づいた際には、すぐに獣医師の診察を受けることが重要です。糖尿病を放置してしまうと、腎臓病、膀胱炎、糖尿病性ケトアシドーシス(血液が酸性に傾く危険な状態)のような深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。
診断と検査について
糖尿病の診断は、いくつかの検査を組み合わせて行います。まず、愛犬や愛猫に見られる症状を確認し、血液検査や尿検査で詳細を調べます。
その中でも、血糖値の測定が特に重要で、空腹時の血糖値が高い場合、糖尿病の可能性が考えられます。
ただし、猫の場合はストレスによって一時的に血糖値が上がることがあるため、慎重に見極める必要があります。
こうした検査によって糖尿病かどうかだけでなく、病気の進行具合や重症度も確認します。また、診断後は定期的な検査が欠かせません。治療の効果を確かめたり、血糖値の変動を把握したりするだけでなく、合併症の早期発見にもつながります。
検査で得た情報をもとに治療を調整していくことで、血糖値を安定させることができます。普段から愛犬や愛猫の健康を気にかけながら、定期的に獣医師に相談し、検査を受けることを心がけましょう。
治療方法と日常のケア方法
糖尿病の治療は、基本的にインスリン療法と食事療法を中心に進めていきます。犬の場合は、ほとんどの場合で一生インスリンを投与する必要がありますが、猫では適切な治療を続けることで糖尿病が寛解する可能性もあります。
<インスリン療法>
インスリンの注射は通常1日2回行い、飼い主様にご自宅で実施していただきます。最初は慣れないかもしれませんが、獣医師が投与の仕方を丁寧に指導しますので、安心して取り組んでください。
<食事療法>
食事療法では、糖尿病用に作られた療法食を使用し、決まった量を毎日同じ時間に与えることが大切です。このような食事は血糖値の急激な変動を抑えるように工夫されています。
また、日常の食事管理については、獣医師と相談しながら進めていきましょう。
<定期的な通院と検査>
治療を進めるうえで、定期的に通院し、血糖値のチェックや治療内容の調整を行うことが欠かせません。特に治療を始めたばかりの時期は通院頻度が高くなりますが、状態が安定してくると徐々に通院間隔を延ばすことができます。
ただし、最低でも3~4か月に1回は検査を受けることをお勧めします。
日常生活での注意点
糖尿病の管理には、日々の生活習慣を整えることがとても大切です。まず、食事の時間と量をしっかりと管理することが基本です。決まった時間に、適切な量の食事を与えることで、血糖値の安定を助けます。
また、糖尿病の治療中は低血糖に注意する必要があります。低血糖になると、ふらつきやけいれんといった症状が現れることがあります。
このような症状が見られた場合は、すぐにブドウ糖を与えるなどの対処を行うことが重要です。事前に低血糖の症状や対処法について、獣医師に相談しておくと安心です。
さらに、運動も糖尿病管理において重要なポイントです。ただし、運動は血糖値に影響を与えるため、無理のない範囲で行うことが大切です。散歩などの軽い運動を規則的に取り入れ、急激な運動は避けるようにしましょう。
こうした日々の工夫と注意を積み重ねることで、愛犬や愛猫の体調を安定させることができます。定期的に獣医師と相談しながら、最適な生活習慣を続けていきましょう。
糖尿病予防と健康管理のポイント
糖尿病を予防し、健康を維持するためには、適正体重の維持が大切です。特に猫では、肥満が糖尿病の大きなリスク要因となるため、肥満を防ぐことが予防の鍵となります。
日々の食事を見直し、必要な栄養をバランスよく摂れるように管理しましょう。
また、適度な運動を取り入れることで、理想的な体重を保つことができます。愛犬や愛猫の体型や活動量に合わせた具体的な方法については、獣医師に相談してみると安心です。
さらに、定期的に健康診断を受けることも重要です。健康診断では、普段は気づきにくい異常や病気の兆候を早期に見つけることができます。定期的なチェックを習慣にすることで、愛犬や愛猫の健康をしっかりと守っていきましょう。
まとめ
糖尿病は決して恐れる病気ではありません。早期に発見し、適切な治療と管理を続けることで、多くの場合、愛犬や愛猫が健康的な生活を送ることができます。
もし症状に気づいたら、できるだけ早く獣医師の診察を受けましょう。その後も定期的に通院し、獣医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
愛犬や愛猫の健康を守るうえで、飼い主様の温かいケアと獣医師との連携が何よりも重要です。正しい管理を行うことで、糖尿病とうまく付き合いながら、愛犬や愛猫とより長く、幸せな時間を過ごすことができるでしょう。
■当院の診療案内はこちら
葛飾区高砂にある【アルファ動物病院】
TEL:03-3609-6304
診療時間:10:00~12:00|15:00~19:00 ※受付18:30まで
休診日:日曜・祝日
住所:東京都葛飾区高砂8-30-12
駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分
駅改札を出て、左の階段を下り、踏切のある道路を(バスが通っています)、踏切を背にしてまっすぐ歩きます。
ひとつめの信号(角に伊勢屋さんというおにぎりやさんがあります)をとおりすぎたらすぐ、道路の左側にあります。1階が駐車場、2階が病院になっています。