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2024.11.08 猫のおしっこが出ない?|尿道閉塞の危険サインと治療や予防方法を解説

愛猫がトイレで苦しそうにしている様子や、おしっこが出ない様子を見ると、不安を感じる飼い主様も多いのではないでしょうか。
実は、猫の「尿道閉塞(尿閉)」は尿道が詰まって尿が出なくなる状態で、このままにしておくと命に関わることもある深刻な症状です。特にオス猫でよく見られるため、早めの対処が大切です。

実際、来院される前に「猫 尿閉」や「猫 排尿困難」といった言葉で調べられる飼い主様も多く、この症状への不安を抱えていらっしゃる方がたくさんいます。

今回は、猫の尿道閉塞(尿閉)の原因や症状、そして早期発見のポイントについてわかりやすく解説します。愛猫の健康を守るために知っておきたい情報をまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。

■目次
1.猫の尿道閉塞とは?症状と見分け方
2.尿道閉塞の主な原因
3.診断方法|どんな検査が行われる?
4.治療法
5.再発予防と日常のケア
6.まとめ

 

猫の尿道閉塞とは?症状と見分け方

尿道閉塞とは、尿をうまく排出できない状態のことを指します。この状態が続くと、急速に全身の具合が悪くなることもあるため、早めに気づいてあげることが大切です。
主な症状には、以下のようなものが見られます。

・頻繁なトイレ行動:猫が頻繁にトイレに行くものの、尿が出ない、または少量しか出ない様子が見られます。

・排尿時の痛み:排尿をしようとするときに鳴き声を上げる、痛がるなどの様子が見られることがあります。

・下腹部の膨らみ:尿が膀胱に溜まり、お腹の下あたりが硬く膨らんでいるように感じる場合があります。

・食欲不振や元気の低下:尿が出ない状態が続くと体内に毒素が溜まり、食欲がなくなったり、元気がなくなったりすることもあります。

なお、「尿道閉塞(尿閉)」と「排尿困難」は似ていますが、異なる状態です。
排尿困難は尿が出にくい状態を指し、尿道閉塞は完全に尿が出なくなる状態を指します。

特に尿道閉塞が続く場合は、すぐに対処が必要ですので、気になることがあればお早めにご相談ください。

 

尿道閉塞の主な原因

猫の尿道閉塞には、以下のようないくつかの原因が考えられます。
特にオス猫は尿道の構造上、こうした問題が起こりやすく、さらに年齢や体調によってもリスクが異なります。

・尿路結石
尿路結石は膀胱や尿道を含む尿路でミネラルが集まり、硬い結石ができる状態です。特に「ストルバイト結石」や「シュウ酸カルシウム結石」は猫に多く見られ、尿道を塞いで尿道閉塞を引き起こしやすくなります。
オス猫は尿道が細いため、結石が詰まりやすく、そのリスクが高くなります。結石ができやすい体質の猫や、飲水量が少ない場合も注意が必要です。

・膀胱炎
膀胱炎は細菌感染やストレス、結晶の影響で膀胱に炎症が起こる状態です。炎症の結果、生じる細胞や粘液の塊により尿道が詰まりやすくなります。
特に水分不足で尿が濃くなる状態や、長時間トイレに行けない場合は、膀胱炎のリスクが高まります。

・腫瘍
膀胱や尿道に腫瘍ができると、尿道を圧迫し、尿の通りが悪くなることがあります。最終的には尿が出なくなり、尿道閉塞の原因となります。
腫瘍は中高齢の猫に多く見られるため、進行状況によっては早急な治療が必要です。

 

診断方法|どんな検査が行われる?

尿道閉塞の原因を特定し、最適な治療方針を決定するために以下のような検査を行います。

・身体検査
お腹の状態や痛みの具合を触診で確認し、膀胱がどの程度膨らんでいるかを確認します。

・尿検査
尿中の成分や血液、結晶が含まれていないかを調べます。尿検査によって、感染症や尿路結石、膀胱腫瘍などが疑われる場合の手がかりを得ることができます。

・血液検査
尿が出ないことで体内に溜まっている老廃物の量や、腎臓の機能の状態を確認するために血液検査を行います。脱水や炎症の有無についても評価します。

・画像診断(レントゲン・超音波検査)
レントゲンや超音波エコーによって尿路の状態や結石の有無、膀胱や尿道に異常がないかを確認します。レントゲンは特に尿路結石の確認に効果的で、超音波検査では腫瘍や炎症の診断に役立ちます。

 

治療法

尿道閉塞の治療法は原因や症状の重さによって異なりますが、一般的には以下のような方法が取られます。

<尿道カテーテルの挿入>

まず尿道にカテーテルを挿入して閉塞を解除し、尿を排出させ、膀胱の負担を軽減します。
カテーテルを数日間そのままにして、尿がちゃんと出るかを確認しながら経過を見ることもあります。

 

<薬や食事による治療>

尿道の炎症や腫れを抑えるために、抗炎症薬や痛み止め、場合によっては抗菌薬が処方されることがあります。
また、尿路結石が原因の場合、結石の再発を防ぐために特定の結石を溶かす食事療法を取り入れることもあります。

 

<手術>

結石が大きく、手術なしでは取り除けない場合には、尿道切開手術膀胱切開手術を行うことがあります。
カテーテルでは尿道閉塞を解除できなかった場合や再発を繰り返す場合には、尿道の構造を広げるための会陰尿道造瘻術といった手術が検討されることもあります。

 

<水分補給と点滴>

尿が出ないことで腎臓の働きが弱っている場合は、点滴で水分を補いながら体の中に溜まった老廃物を流します。

 

再発予防と日常のケア

尿道閉塞の再発を防ぐためには、日々のケアがとても大切です。
まずは、水分をしっかり摂らせることがポイントです。十分な水分を摂ることで、尿が濃くなるのを防ぎ、結石の予防にもつながります。ウェットフードを併用するのも水分補給に効果的です。

また、食事管理にも気を配りましょう。尿路結石の再発予防には、専用の療法食が役立つことがあります。かかりつけの獣医師と相談しながら、愛猫に合った食事を選ぶとよいでしょう。

トイレ環境を整えることも大切なポイントです。猫はトイレが清潔ではないと排尿を我慢してしまうことがあるため、いつも清潔に保ち、安心して使える場所に設置しましょう。多頭飼いの場合は、「頭数+1個」を目安にトイレを用意すると、猫がよりリラックスして排尿できる環境が整います。

さらに、環境の変化や多頭飼いによるストレスも尿道閉塞を引き起こす原因になることがあるため、猫がリラックスできる環境づくりも欠かせません。過剰なストレスがかからないよう、過ごしやすい環境を整えてあげましょう。

そして、定期的な健康診断も忘れてはいけません。
尿検査や血液検査を行うことで腎臓や尿路の状態を確認でき、異常が見られた場合には早めに対策を取ることができます。健康診断を通して、愛猫の健康を守っていきましょう。

 

まとめ

尿道閉塞は猫にとって非常に深刻な健康問題であり、早めの対応が重要です。尿が出なくなる原因には尿路結石や感染症などがあり、特にオス猫ではリスクが高いとされています。もし少しでも異変を感じたら、早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

日常のケアとしては、十分な水分を摂らせることや、適切な食事管理、清潔なトイレ環境を整えることが再発予防に役立ちます。
愛猫の健康を守るために、普段からの観察と定期的な健康診断を心がけましょう。

 

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