ブログ

2024.09.27 犬の前庭疾患とは?|ふらつきや首の傾きが見られたら要注意

犬の前庭疾患は、平衡感覚を司る神経系に障害が起きることで、ふらつきや首の傾きなどが見られる病気です。この疾患は主に老犬に多いですが、若い犬でも発症することがあります。

前庭疾患は適切な診断と治療が必要ですので、もし症状に気づいたら、すぐに動物病院で診てもらうことが大切です。

今回は、前庭疾患の原因や症状、診断方法、そしてご家庭でできるケアについて解説します。

■目次
1.前庭疾患とは?
2.前庭疾患の主な症状
3.前庭疾患と間違えやすい他の疾患
4.前庭疾患の診断方法
5.処置方法
6.飼い主様へのアドバイス|ご家庭でのケアと注意点
7.まとめ

前庭疾患とは?

前庭系は内耳にあり、体のバランスを保つために重要な役割を果たす器官です。犬の前庭疾患は、この前庭系に問題が生じたときに発症します。

 

原因としては、中耳炎や内耳炎、脳腫瘍、甲状腺機能低下症などが挙げられますが、特に高齢犬では原因がはっきりしない「特発性前庭疾患」も多く見られます。

前庭系に障害が起こると、犬は平衡感覚を失い、ふらつきなどの神経症状が現れます。

 

前庭疾患の主な症状

前庭疾患の主な症状には以下のものがあります。

 

特徴的な首の傾き:犬が首をかしげるように頭を一方向に傾けたままの状態になります。

 

眼球振盪(がんきゅうしんとう):眼球が意図せずに素早く動く現象で、横や上下に揺れることがあります。

 

歩行異常:ふらつきや円を描くように歩く様子が見られます。

 

症状は片側性両側性かで異なります。片側(1本の脚)に症状が出る場合は整形外科的な問題の可能性が高いですが、両側(2本以上の脚)に症状が出る場合は神経系の異常が考えられます。

また、脚がだらんとしているか、ピンと伸びているかによっても原因が異なる可能性があります。

 

<脚がだらんとしている場合

脚が力なく垂れている状態は、神経系の障害が原因で筋肉にうまく指令が伝わらないことを示している可能性があります。

これは神経の圧迫や損傷、脳や脊髄に問題がある場合に見られることが多いです。

 

<脚がピンと伸びている場合

脚が硬く伸びた状態で動かない場合は、脳や脊髄の問題が原因で筋肉が過剰に緊張している可能性があります。

これは神経系の異常や中枢神経系に問題がある場合に起こることがあり、特に脳の損傷や重篤な神経疾患が関わっていることが多いです。

 

前庭疾患と間違えやすい他の疾患

前庭疾患は、いくつかの他の病気と似た症状を示すことがあり、見分けるのが難しいことがあります。以下の疾患と間違えやすいので、注意が必要です。

 

整形外科的な問題:片側性か両側性か、どちらに症状が出ているかや、その範囲が診断の手がかりとなります。

 

中耳炎や脳腫瘍:これらも前庭疾患と似た症状を示すことがあり、より詳しい検査が必要になります。

 

前庭疾患の診断方法

前庭疾患の診断には、以下のような手順が含まれます。

 

<初期診察と詳細な問診>

まず、犬の全体的な健康状態を確認し、症状がいつから始まったのか、どのように進行しているのか、過去の病歴などについて詳しく問診します。

具体的な症状(首の傾き、眼振、歩行の異常など)や、症状が突然現れたのか徐々に進んだのかといった情報も重要です。

 

<神経学的検査>

 ・姿勢反応:犬の体位を変えて、バランスを保つ力を確認します。

 ・脊髄反射:膝を叩いて反応を確認する膝蓋腱反射や、脚を曲げたときの反射を確認し、脊髄の機能を評価します。

 ・脳神経系検査:12対ある脳神経を個別にチェックし、特に前庭疾患に関係する内耳神経の機能を重点的に調べます。

 

これらの検査により、症状が末梢性前庭疾患によるものか、中枢性前庭疾患によるものかを判断します。

 

<甲状腺検査>

甲状腺機能低下症が原因となることもあるため、甲状腺ホルモン(T4)の血中濃度を測定します。

特に、中年以降の犬や、体重の増加や被毛の変化など、甲状腺機能低下症が疑われる症状が見られる場合には重要です。

 

処置方法

当院では、必要に応じて脳脊髄液検査や脳波検査など、高度な検査が可能な二次診療施設をご紹介しています。

診断や治療方針の決定は、飼い主様と十分に話し合い(インフォームドコンセント)を行い、最適な選択ができるようサポートいたします。

 

飼い主様へのアドバイス|ご家庭でのケアと注意点

愛犬が安全に過ごせる環境づくりが大切です。滑りにくい床材を使用し、段差を少なくすることで、転倒のリスクを減らしてあげましょう。

また、日常的に歩き方や姿勢、食欲の変化をこまめに観察し、異常がないか気を配ることが大切です。

 

再発を防ぐためには、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、ストレスをためないようにすることがポイントです。

特に高齢の犬の場合は、定期的に健康診断を受けることで、体調の変化を早めに見つけ、予防につなげることができます。

 

まとめ

前庭疾患は、適切な診断や治療を受けることで、症状が改善するケースが多くあります。愛犬のふらつきや、いつもと違う様子を見せたときには、早めに獣医師に相談することが大切です。

 

早期の対処が愛犬の健やかな生活につながりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

 

当院の診療案内はこちら

 

葛飾区高砂にある【アルファ動物病院】

TEL:03-3609-6304

診療時間:10:00~12:00|15:00~19:00 ※受付18:30まで

休診日:日曜・祝日

住所:東京都葛飾区高砂8-30-12

駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)

最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分

駅改札を出て、左の階段を下り、踏切のある道路を(バスが通っています)、踏切を背にしてまっすぐ歩きます。ひとつめの信号(角に伊勢屋さんというおにぎりやさんがあります)をとおりすぎたらすぐ、道路の左側にあります。1階が駐車場、2階が病院になっています。