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2025.10.07  【犬の歯石除去】全身の健康を守る第一歩|安全な麻酔下治療と予防ケアのポイント

「うちの子、最近口が臭う気がする…」「歯が黄色くなってきたけれど、年齢のせいかな?」とお悩みの飼い主様も多くいらっしゃるのではないかと思います。

犬の歯石は見た目や口臭だけの問題と思われがちですが、実は全身の健康にも大きく関わっています。歯石や歯周病を放置すると、歯が抜けてしまうだけでなく、心臓や腎臓など命に関わる病気を引き起こすこともあるのです。

今回は、犬の歯石と歯周病のリスク、歯石除去方法の違い、実際の治療の流れや術後ケア、そして予防の工夫までを詳しく解説します。

■目次
1.犬の歯石と歯周病|全身に広がるリスク
2.無麻酔歯石除去と麻酔下歯石除去の違い
3.歯石除去の流れと術後の注意点
4.まとめ

犬の歯石と歯周病|全身に広がるリスク

犬の口の中は人と比べてアルカリ性に傾いているため、歯垢が短期間で歯石へと変化しやすい環境です。歯石は、歯垢(細菌のかたまり)が唾液中のミネラルによって固まったもので、一度付着するとご家庭でのケアだけでは取り除けません

歯石がたまると、その周囲で細菌が増え、歯周病が進行していきます。初期は歯ぐきが赤く腫れる「歯肉炎」から始まり、やがて出血や口臭が目立つようになります。さらに悪化すると炎症が歯の根元にまで広がり、骨を溶かして歯がぐらつき、最終的には抜け落ちてしまうこともあります。

怖いのはそれだけではありません。歯周病菌が血液に乗って全身を巡ると、心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)や腎不全、肝臓病 などの発症リスクを高めるといわれています。つまり、歯の問題は「口臭や見た目の問題」にとどまらず「全身の健康を脅かすリスク」に直結しているのです。

無麻酔歯石除去と麻酔下歯石除去の違い

近年、一部では「無麻酔」で行う歯石除去が見られますが、日本小動物歯科研究会や日本獣医師会では、安全性や治療効果の観点から無麻酔歯石除去を推奨していません。

無麻酔では、犬が押さえつけられることで強いストレスがかかるほか、歯ぐきの中に潜む歯石や歯周病の原因菌までは十分に取り除けないため、一時的な見た目の改善にとどまり、根本的な治療とはいえないとされています。

そのため、当院では犬の安全と確実な治療効果を重視し、全身麻酔下での歯石除去のみ対応しています。

<麻酔下歯石除去>

全身麻酔をかけて口を大きく開き、超音波スケーラーを用いて歯の表面と歯ぐきの中の歯石まで徹底的に取り除く方法です。

▼メリット
麻酔下でしっかりと口を開けられるため、歯ぐきの中に隠れた歯石まで徹底的に除去することができます。処置後に歯の表面を研磨する「ポリッシング」も行うため、歯石の再付着も防ぎやすくなります。

▼デメリット
全身麻酔を行うため一定のリスクを伴い、心臓や腎臓の状態によっては受けられない場合もあります。

<麻酔のリスクと安全管理>

麻酔には一定のリスクがありますが、当院では次のような体制を整え、リスクを最小限に抑えています。

手術前に血液検査を行い、臓器の機能を確認
体格や健康状態に合わせて麻酔薬を選定
処置中は全身モニターで心拍・呼吸・血圧などを細かくチェック

こうした安全管理のもとで、一頭一頭の状態を丁寧に見極めながら処置を行っています。

歯石除去の流れと術後の注意点

「歯石除去」と聞くと、どんな手順で進められるのか、また処置後に犬がどのように過ごすのか、不安に思われる飼い主様も多いのではないでしょうか。ここでは、処置の流れから回復期の過ごし方、そして再発を防ぐためのケアについてご紹介します。

<歯石除去の流れ>

安全を第一に、次のようなステップを踏んで丁寧に進めていきます。

▼診察
お口の状態や全身の健康状態を確認し、歯石の付き具合や歯ぐきの炎症などをチェックします。

▼術前検査
血液検査などで心臓や腎臓の機能を調べ、麻酔に耐えられるかを確認します。不安がある場合には無理に進めることはありません。

▼処置
全身麻酔のもとで超音波スケーラーを用いて歯石を取り除きます。さらに歯の表面を研磨(ポリッシング)し、歯石が再び付着しにくい状態に仕上げます。

▼覚醒・経過観察
処置後はしっかりと麻酔から目が覚めるまで院内でモニタリングします。回復を確認してからご帰宅いただくので安心です。

<術後の生活で気をつけたいこと>

歯石除去の処置が終わったあとも、安心して過ごすためには術後の生活管理と日常の予防ケアが欠かせません。回復期には次のような点に注意しましょう。

・食事
処置直後は柔らかめのフードから始め、様子を見ながら普段の食事に戻していきます。

・お口のチェック
出血や腫れがないかを毎日確認し、異変があればすぐにご相談ください。

・安静
数日間は激しい運動を控え、落ち着いて過ごさせてあげましょう。

こうしたポイントを押さえることで、回復をスムーズにし、合併症を防ぐことにつながります。

<歯石の再発を防ぐ予防ケア>

さらに、歯石の再発を防ぐためには日常のケアも重要です。

・毎日の歯磨き
もっとも効果的な予防法です。無理のない範囲から習慣化していきましょう。

・デンタルガムやデンタルフード
歯磨きが難しい子でも取り入れやすく、日常の補助ケアとして有効です。

・定期的な口腔チェック
再発を早めに防ぐためには、定期的に動物病院での口腔チェックを受けていただくことが大切です。

<アルファ動物病院の取り組み>

当院では、治療後もケアを続けやすいようにサポート体制を整えています。

当院LINE公式アカウントの友だち登録で「無料の歯磨き指導」を実施
歯ブラシやデンタルジェルなどのデンタルグッズを院内に取り揃え

さらに、犬によって歯石のつきやすさには個体差があるため、定期的なチェックを通じて再処置が必要になる頻度を確認し、その子の状態に合わせて適切なタイミングをご提案しています。

処置して終わりではなく、その後も一緒に口腔ケアを続けていけるように取り組んでいます。

まとめ

犬の歯石や歯周病は、見た目や口臭だけでなく、全身の健康にも影響することがあります。だからこそ、定期的な歯石除去と日常のケアが大切です。

アルファ動物病院では、安全に配慮した麻酔下での処置を行い、術後のサポートやご家庭で続けられるケアまで一緒に取り組んでいます。愛犬の健康を守る第一歩として、歯石や口臭が気になったときはどうぞお気軽にご相談ください。

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