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2024.09.17 犬と猫の腎臓病について|高齢の犬や猫に多く見られる病気

犬や猫にとって腎臓は体内の老廃物を排出し、健康を維持するために欠かせない臓器です。しかし、犬や猫が年齢を重ねるにつれて腎臓の機能は徐々に低下し、腎臓病を引き起こすことがあります。この病気は特に高齢の犬や猫に多く見られ、早期発見と適切な治療を行うことが非常に重要です。

 

今回は犬と猫の腎臓病について、原因や治療方法、予防法とご家庭での注意点などを解説します。

■目次
1.腎臓病とは?
2.原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法とご家庭での注意点
7.まとめ

腎臓病とは?

腎臓は、体内の老廃物を尿として排出する機能を持つ臓器です。さらに、血圧の調整や赤血球の生成促進、骨の強化などの役割も担っています。これらが正常に機能しなくなる状態を腎臓病と呼びます。

 

原因

腎臓病は大きく分けて、以下の2つのタイプに分類されます。

 

・急性腎臓病 :短期間で腎臓の機能が急激に低下する
・慢性腎臓病 :加齢とともにゆっくりと進行し、腎臓の機能が低下する

 

特に犬や猫においては、慢性腎臓病が大きな問題となります。また、急性腎臓病はその原因に応じて以下の3つのタイプに分類されます。

 

<腎前性>

腎臓への血流が低下する状態です。
これには、重度の脱水、熱中症、手術中の大量出血などが原因として挙げられます。

 

<腎性>

腎臓そのものが直接損傷を受ける状態です。
具体的には、尿路感染による細菌性腎盂腎炎、毒物の摂取 (ブドウ、ユリ、不凍液など)、糸球体腎炎などの自己免疫性疾患が原因となります。

 

<腎後性>

腎臓から尿を正常に排出できなくなる状態です。
主な原因には、尿石症による尿道閉塞などが挙げられます。

 

また、慢性腎臓病は加齢とともに腎機能が低下する原因はまだ十分に解明されていません。しかし、特定のウイルス感染や水分不足、遺伝的要因が関係していると考えられています。加齢による慢性腎臓病を完全に防ぐことは難しいとされています。

 

症状

急性腎臓病を起こすと以下の症状が見られます。

 

・活力の低下
・食欲の低下
・嘔吐
・下痢 など

 

また、慢性腎臓病を起こすと、症状は病気の進行度に応じて現れ、以下のようにステージ1からステージ4までに分類されます。

 

・ステージ1:高窒素血症なし

最も初期の段階では、症状が現れないことがほとんどです。

 

・ステージ2:軽度の高窒素血症

症状が見られないことがほとんどですが、稀に多飲多尿といった軽い症状が現れることもあります。

 

・ステージ3:中等度の高窒素血症

食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、貧血など、さまざまな症状が現れることがあります。

 

・ステージ4 :重度の高窒素血症

ステージ3の症状に加えて、元気や食欲の低下、意識レベルの低下、激しい嘔吐などさらに深刻な症状が現れます。この状態では、積極的に治療介入を行わないと、命に関わる危険性があります。

 

診断方法

腎臓病の診断は、血液検査や尿検査、さらに画像検査(レントゲンやエコー)などを総合的に組み合わせて行います。
慢性腎臓病の確定診断には、腎臓生検(腎臓に針を刺して細胞を採取する検査)が必要です。しかし、この検査は体に大きな負担がかかるため、実際に行われることはほとんどありません。

 

具体的な腎臓病の検査内容は以下の通りです。

 

<血液検査>

腎臓病においては、BUN(尿素窒素)、クレアチニン、SDMAの値が上昇します。特にSDMAは、腎臓病が進行する前の段階で異常値を示すため、腎臓病の早期発見に非常に役立ちます。

 

<尿検査>

尿比重の低下やタンパク尿の有無、尿蛋白クレアチニン比(UPC)などを評価します。
これらの指標は、腎臓の機能状態を把握するために重要です。

 

<レントゲン検査>

腎臓のサイズを測定し、腎臓腫瘍や尿路結石の有無などを確認します。
これにより、腎臓の構造的な異常を評価することができます。

 

<エコー検査>

腎臓や膀胱の内部の状態を詳しく観察します。これにより、これらの臓器に異常や病変が存在するかどうかを確認することができます。

 

慢性腎臓病の厄介な点は、腎機能の大部分を失ってから初めて血液検査に異常が現れることです。つまり、病気がかなり進行してから発見されることが多いです。そのため、慢性腎臓病を早期に発見するためには、血液検査だけでなく、尿検査や画像検査も併せて行う必要があります。

 

治療方法

急性腎臓病の場合は、それぞれの原因に応じた治療を行います。具体的には、脱水には輸液療法が用いられ、尿路感染症には抗菌薬が投与されます。また、尿道閉塞に対しては閉塞を解除する治療が行われます。

 

一方で、慢性腎臓病は完治が難しいため、進行を抑えることを目標に治療を進めます。治療法としては、定期的な皮下輸液で脱水を改善し、腎臓に負担をかけない食事療法を行います。また、腎機能の悪化を抑える薬やサプリメントの投与、降圧剤の使用、下痢や嘔吐、貧血に対する対症療法なども組み合わせます。これらの治療を通じて、犬や猫のQOL(生活の質)を維持しながら、長期的な管理を行っていきます。

 

予防法とご家庭での注意点

腎臓病を完全に予防することは困難ですが以下のような対策を講じることで、発症リスクを低減し、早期発見・早期治療に結びつけることが可能です。

 

・人間用の食べ物など、適切ではないものを与えない
・常に新鮮な水を飲める環境を整える
・定期的に血液検査、尿検査、画像検査を含む健康チェックを受ける

 

まとめ

腎臓病は犬や猫の健康に大きな影響を与える病気であり、特に高齢の犬や猫に多く見られます。この病気は一度進行すると元の状態に戻すことが困難であるため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。日頃から健康診断を定期的に受け、適切な食事と水分補給を心がけることで、腎臓病のリスクを減らすことができます。

 

もし腎臓病と診断された場合は、進行を遅らせるための継続的な管理を行い、犬や猫のQOLを維持しながら寄り添っていくことが大切です。

 

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