2024.12.02 愛犬と愛猫の口臭は病気のサイン?|獣医師が教える原因と予防法
愛犬や愛猫の口元から、「あれ、ちょっと臭うかも…」と感じたことはありませんか?口臭は、愛犬や愛猫の健康状態を映し出す重要なサインかもしれません。もし軽視してしまうと、気づかないうちに全身の健康へ悪影響を及ぼすことも考えられます。
特に、犬や猫の口臭の主な原因として挙げられるのが、歯周病や口腔内のトラブルです。これらを放置してしまうと、口の中だけでなく、心臓や腎臓といった重要な臓器にも悪影響を及ぼす可能性があるとされています。
今回は、犬や猫の口臭の原因と具体的なケアの方法 を分かりやすく解説します。
■目次
1.犬や猫の口臭の主な原因
2.歯石を放置するリスク
3.歯石除去の方法
4.自宅でできるデンタルケア
5.獣医師のケアと自宅ケアの組み合わせによる歯のケア
6.まとめ
犬や猫の口臭の主な原因
犬や猫の口臭には、以下のようにさまざまな原因が考えられます。
・歯垢や歯石の蓄積
食べ物のカスや細菌が集まってできる歯垢は、時間が経つと唾液中のカルシウムと結びつき、硬い歯石へと変化します。この歯石は、通常のブラッシングでは取り除けず、動物病院での専門的な処置が必要になります。
歯垢や歯石が口臭の原因となるだけでなく、歯周病の引き金にもなるため注意が必要です。
・食べ物
特定のフードやおやつが口臭を強める場合があります。特に、魚系のフードやおやつは匂いが残りやすいことが知られています。食べ物を見直すことも、口臭ケアの一環になります。
・全身疾患
糖尿病や腎臓病といった全身疾患も、口臭を引き起こす原因の一つです。例えば、糖尿病では甘い匂い、腎臓病ではアンモニアのような独特な匂いが感じられることがあります。
・口内の傷や腫瘍
口の中にできた傷や腫瘍が原因で細菌が増殖し、口臭が悪化することがあります。特に腫瘍の場合、早期発見が重要です。
歯石を放置するリスク
歯石をそのままにしておくと、口臭の問題だけでなく、深刻な健康問題に発展する可能性があります。口腔内の健康は全身の健康と密接に関係しているため、早めに対応することがとても大切です。
・歯周病の進行
歯石が蓄積すると、最初に歯肉や歯の周りの組織が炎症を起こします。この状態を「歯肉炎」と呼びます。炎症が進行すると歯肉が下がり、歯を支える骨が溶けてしまう 「歯周病」へと発展します。
歯周病の痛みは愛犬や愛猫の食欲を低下させる原因になり、さらに口内の感染が悪化することで口臭がより強くなることもあります。
・歯の喪失
歯周病が悪化すると歯を支える骨が溶け、最終的に歯が抜け落ちてしまうことがあります。歯を失うと食事が難しくなり、栄養状態が悪化して全身の健康にも影響を与えます。
さらに重症の場合は、顎の骨が溶けたり折れたりするケースもあります。
・全身への影響
歯周病による細菌が血流に乗ると、全身の健康に重大な影響を与えることがあります。具体的には、次のようなリスクが考えられます。
・心臓病:歯周病菌が血液を通じて心臓に到達し、心内膜炎を引き起こす可能性があります。
・腎臓病:長期間の歯周病が腎臓に負担をかけ、慢性腎臓病のリスクを高めることがあります。
このように、歯石は単なる口の中の問題にとどまらず、全身の健康を脅かす可能性があります。そのため、歯石の蓄積を防ぐための予防策や、早期対応を心がけることが大切です。
歯石除去の方法
歯石を取り除くには、獣医師による専門的な処置が必要です。普段のケアだけでは対応しきれない歯石除去について、詳しくご説明します。
<スケーリングとは?>
スケーリングは、歯の表面に付着した歯石を専用の機械で取り除く処置です。
主に超音波スケーラーと呼ばれる機械を使用し、固くなった歯石を物理的に除去します。この処置では、歯石だけでなく歯垢も徹底的に取り除き、歯の表面をツルツルに仕上げます。
<スケーリングの手順と効果>
スケーリングの主な手順は以下の通りです。
1.診察と麻酔:処置前に愛犬や愛猫の全身の健康状態を確認し、全身麻酔を行います。
麻酔が必要な理由は、動物が処置中に動いてしまうと危険であるためです。リラックスした状態で行うことで、細部まで確実に歯石を除去することができます。
2.歯石除去:超音波スケーラーを使用して、歯の表面に固着した歯石を丁寧に取り除きます。
3.歯の研磨:歯石を除去した後、歯の表面を滑らかに磨く研磨処置を行います。この研磨によって歯垢が再付着しにくくなるため、歯石の再発を防ぐ効果が期待できます。
<スケーリング後のケアが大切>
スケーリングが完了しても日常のケアを怠ると再び歯石が蓄積してしまいます。処置後のケアを習慣にし、健康な口内環境を維持することが重要です。
専用の歯ブラシや歯磨き剤を使った歯磨きや、デンタルガムや専用フードの活用が効果的です。また、定期的に獣医師による歯科検診を受けることで、口腔内の健康を維持できます。
自宅でできるデンタルケア
愛犬や愛猫の口臭を防ぐためには、毎日のケアがとても大切です。正しいケアを取り入れることで、歯石の蓄積や口臭の発生を抑えることができます。
<歯磨きの方法と頻度>
可能であれば 毎日、少なくとも週に2~3回の歯磨きを目指しましょう。
ペット専用の歯ブラシを使い、歯の表面や歯肉との境目を優しく磨くことがポイントです。また、専用の歯磨き粉を使用すると、安全かつ効果的です。
慣れていない場合は、最初は指やガーゼを使い、少しずつ歯ブラシに慣れさせてあげましょう。
<デンタルケア用品の選び方>
ペット専用の歯ブラシは犬や猫の口のサイズに合い、柔らかくヘッドの小さいものがおすすめです。
歯磨き粉は必ずペット用を選びましょう(人用にはキシリトールなど動物にとっては有害な成分が含まれる場合があるためです)。歯ブラシが苦手な場合は、デンタルシートを使うのも一つの方法です。
<デンタルケア用のおやつや食事の活用>
噛むことで歯垢を落とすデンタルガムや、歯石予防に役立つ特別なペットフードも活用しましょう。
また、飲み水に混ぜるだけで口内環境を整えるデンタルケア商品も便利です。
<定期的な口腔チェック>
愛犬や愛猫の口の中を観察する習慣をつけ、歯や歯肉の色、口臭の有無をチェックしましょう。もし口臭が強い、歯肉が赤い、出血しているなどの異常があれば、早めに動物病院に相談してください。
獣医師のケアと自宅ケアの組み合わせによる歯のケア
愛犬や愛猫の健康な歯を保つためには、獣医師による専門的なケアと、飼い主様による日々の自宅ケアを組み合わせることが最も効果的です。
健康な歯を維持するために、最低でも1年に1〜2回の歯科検診を受けることをおすすめします。獣医師によるスケーリングや歯周ポケットの掃除は、自宅ではできないケアです。
また、歯周病や口腔腫瘍といったトラブルを早期に発見することで、大きな健康リスクを防ぐことができます。
獣医師のケアを補うためには、飼い主様による日々のケアが欠かせません。ご家族で役割を分担するなど工夫をして、無理なく口腔ケアを続けましょう。
まとめ
犬や猫の口臭は、ただの匂いの問題ではなく、全身の健康状態に影響を与える重要なサインです。歯石や歯周病によるリスクを減らすためには、早期発見と適切なケアが欠かせません。
日々の口腔ケアを習慣にすることで、愛犬や愛猫の健康寿命を守り、いつまでも元気で快適に過ごせる生活を支えることができます。
もし口臭や歯肉の異常など気になる症状があれば、迷わず動物病院に相談してください。
愛犬や愛猫の健康を守る第一歩を、今日から始めてみましょう。
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TEL:03-3609-6304
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休診日:日曜・祝日
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駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分
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