2025.11.26 爬虫類の冬の飼育ガイド|温度管理のコツと体調不良のサインを獣医師が解説
冬の寒さは人にとってつらいだけでなく、変温動物である爬虫類にとっては命に関わる問題です。
外気温が下がると体温も低下し、見た目は元気そうでも内臓の働きが鈍くなって、消化不良や免疫低下を招くことがあります。特に初心者の飼い主様にとって、冬場の温度管理は“生命線”ともいえる重要なポイントです。
今回は、爬虫類の体調を守るために知っておきたい温度管理の基本と、体調不良のサインについて解説します。

■目次
1.爬虫類にとって冬の温度管理が重要な理由
2.爬虫類の種類別・理想的な温度帯
3.暖房器具と設置の工夫
4.冬に気をつけたい体調不良のサインと受診の目安
5.まとめ
爬虫類にとって冬の温度管理が重要な理由
爬虫類は、自分の体温を環境の温度に依存して調整しています。そのため、室温が下がる冬場は特に注意が必要です。温度が適切でない場合、次のような不調を引き起こすおそれがあります。
・消化不良
低体温になると胃腸の動きが鈍り、食べたフードが消化できずに腐敗し、嘔吐や便秘の原因となります。
・免疫低下
細菌や寄生虫への抵抗力が落ち、肺炎や口腔内感染を起こす危険があります。
・代謝異常
エネルギーの使い方が乱れ、急激な体重減少や栄養不足につながります。
・冬眠様状態
動きが止まり、給餌や飲水ができなくなって衰弱するケースもあります。
外見だけでは判断が難しいため、正確な温度管理こそが健康を守る第一歩です。
爬虫類の種類別・理想的な温度帯
爬虫類と一口にいっても、種類によって快適に過ごせる温度は大きく異なります。
<温度管理の基本>
爬虫類は体温を環境に合わせて変えるため、ケージ内に温度差(勾配)をつくることが大切です。
・ホットエリア(暖かい場所):体を温め、消化や代謝を助けるスペース
・クールエリア(涼しい場所):温まりすぎた体を休める避難スペース
・バスキングスポット:日光浴のように体を温められる高温エリア(夜行性では不要な場合もあります)
また、温度差をうまく利用するために「隠れ家(シェルター)」を設けるのも重要です。これは爬虫類が安心して身を隠し、温度や湿度を調整するための小さな空間で、ホットエリア側とクールエリア側の両方に設置するとより快適に過ごせます。
この“温度の差”と“隠れ場所の確保”によって、爬虫類は自分で快適な環境を選び、体調を整えられるようになります。
<種類別の温度設定とポイント>
ここからは、代表的な爬虫類ごとの温度設定を具体的に見ていきましょう。
▼ヒョウモントカゲモドキ(レオパードゲッコー)
夜行性のトカゲで、暗い場所で落ち着いて過ごす習性があります。床面からじんわりと体を温める環境が適しています。
・ホットエリア:31〜33℃
・クールエリア:25℃前後
・バスキングスポット:基本的に不要
(※飼育環境や個体差によっては、適度な照明を併用する場合もあります。)
・夜間の目安:20℃を下限に設定
【ポイント】パネルヒーターで床面を温め、ホットエリア側のシェルターにも適度なぬくもりが伝わるようにすると安心です。寒くなると動きが鈍くなり、食欲不振を起こすことがあります。
▼フトアゴヒゲトカゲ
昼行性で、強い光と高温を好みます。日中にしっかり体を温められる環境が必要です。
・ホットエリア:38〜40℃
・クールエリア:28℃前後
・バスキングスポット:必要
・夜間の目安:20〜22℃
【ポイント】日中はバスキングライトを使って、体をしっかり温められるエリアをつくりましょう。夜は緩やかに温度を下げると自然に近い環境になります。消化や代謝を促すためにも、日中と夜間の温度差を意識しましょう。
▼ボールパイソン
夜行性のヘビで、昼夜の温度差があまりない環境を好みます。ケージ内の左右で温度を分け、心地よい場所を選べるようにしましょう。
・ホットエリア:30〜32℃
・クールエリア:25〜27℃
・バスキングスポット:不要
・夜間の目安:22℃を下限に設定
【ポイント】全体を均一に温めるよりも、片側を少し暖かく保つと自然に近い環境になります。床面の温度を安定させ、時間帯による急な冷え込みを防ぎましょう。
▼ギリシャリクガメ・ヘルマンリクガメなどの陸ガメ類
昼行性で、日中に体を温める習性があります。しっかりしたバスキングスポットをつくることが大切です。
・ホットエリア:35℃前後
・クールエリア:28〜30℃
・バスキングスポット:必要
・夜間の目安:20℃を下限に設定
【ポイント】日中はバスキングライトを使って、太陽の光を浴びるように体を温められるスペースをつくりましょう。夜間は冷えすぎに注意が必要です。特に床材が冷えると代謝が落ちるため、パネルヒーターを併用すると安心です。
これらはあくまで代表的な目安であり飼育している種や個体ごとの性格・行動に合わせて微調整することが大切です。「よく動いている」「フードをしっかり食べる」「排泄がスムーズ」といった様子が見られていれば、その温度が合っているサインと考えられます。
暖房器具と設置の工夫
冬場の飼育では、外気温の変化がそのままケージ内に影響します。爬虫類の健康を守るには、複数の暖房器具を組み合わせて温度を安定させる工夫が重要です。
▼保温球・セラミックヒーター(バスキング用)
太陽光の代わりに高温スポットをつくるヒーターで、特に昼行性の爬虫類に必須です。
【選び方のポイント】
・光を出す保温球は昼行性向き。夜も使うなら光を出さないセラミックヒーターが◎。
・出力(W数)はケージサイズに合わせる。出力が高すぎると火傷や過熱のおそれも。
【設置のコツ】
・ケージの一部を照らすよう角度を調整し「温まる場所」と「休める場所」を分ける。
・熱がこもらないよう、上部に通気スペースを確保。
▼パネルヒーター(床面加温用)
床から体を直接温め、夜間やシェルターを快適に保ちます。夜行性の爬虫類にもおすすめです。
【選び方のポイント】
・床の半分程度を温めるサイズを選ぶと、動物が自分で温度を選びやすい。
・表面温度調節や耐水仕様があるタイプを選ぶと安心。
【設置のコツ】
・ケージ下だけでなく、シェルター下にも温かい場所を作る。
・じかに触れる部分が熱くなりすぎないように、薄いマットを挟む。
▼サーモスタット(温度自動制御)
設定温度を維持し、加熱しすぎや冷えすぎを防ぐ装置です。
【選び方のポイント】
・温度センサー付きで、複数のヒーターを同時制御できるタイプが便利。
・温度設定の範囲が広く、誤作動防止機能があるものを選ぶと安心。
【設置のコツ】
・センサーはヒーターの真下ではなく、動物が過ごす場所の近くに固定。
・こまめに温度計で実測し、設定とのずれを定期的に確認。
<温度計・湿度計の設置方法>
ケージ内の1か所だけでは温度管理が十分にできません。ホットエリアとクールエリアの両方に設置し、温度差を確認しましょう。デジタルタイプのワイヤーセンサー付き温度計なら、リアルタイムで複数箇所を計測できて便利です。
湿度も、シェルター側と乾燥しやすいバスキング側の両方でチェックすると安心です。
<適温を保つことが健康維持につながる>
爬虫類は体温が下がると内臓の働きが鈍り、食欲の低下・活動量の減少・免疫力の低下を引き起こします。一方で、適温を保てば次のようなメリットがあります。
・消化が良くなり、食欲が安定する
・活動量が上がり、自然な行動が見られる
・体調を崩しにくく、感染症への抵抗力も保てる
「温めすぎず、冷やしすぎず」を意識し、温度勾配のある環境づくりを心がけましょう。
冬に気をつけたい体調不良のサインと受診の目安
冬は活動量が落ちるため、体調の変化が目立ちにくくなります。そのため、一見軽く見えるような小さな変化でも、体調不良のサインを見逃してしまうことがあります。
<こんな変化は要注意です>
・フードを食べない、糞便の出方が変わった
・じっとして動かない、反応が鈍い
・呼吸が荒い、口を開けて呼吸している
・体重の減少、体がしぼんで見える
・目や鼻の分泌物、甲羅や皮膚の異常
これらはいずれも、重い病気の前触れの場合があります。特に、呼吸が苦しそうな様子や極端な食欲低下・体重減少が見られる場合は、すぐに動物病院にご相談ください。
<温度管理だけでは防げない不調も>
適温をしっかり保っていても、感染症や内臓疾患など、温度管理だけでは防ぎきれない病気もあります。そのため、定期的な健康診断で「体調の見える化」をすることが大切です。検査で早期に異常を見つけられれば、重症化を防ぐことができます。
アルファ動物病院では、エキゾチックアニマル(爬虫類を含む)の診療にも力を入れており、飼い主様の不安に寄り添いながら、体調管理や食事のアドバイスまで丁寧に行っています。「ちょっと気になるな」と感じた時点で、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
爬虫類にとって冬の温度管理は、命を守るためのもっとも基本的なケアです。種類ごとの適温を確認し、ヒーターやサーモスタットを上手に組み合わせることで、体調を安定させることができます。
また、見た目が元気でも、体の中では不調が進んでいることがあります。「なんとなくいつもと違う」と感じた時点で早めに受診することが、健康を守るいちばんの近道です。
当院では、飼い主様と一緒にその子の状態を丁寧に確認しながら、安心できる環境づくりをサポートしています。気になることがあればいつでもご相談ください。
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住所:東京都葛飾区高砂8-30-12
駐車場:専用駐車場1台あり(病院の1階が駐車場です)
最寄駅:京成高砂駅(京成線)から徒歩5分
駅改札を出て、左の階段を下り、踏切のある道路を(バスが通っています)、踏切を背にしてまっすぐ歩きます。
ひとつめの信号(角に伊勢屋さんというおにぎりやさんがあります)をとおりすぎたらすぐ、道路の左側にあります。1階が駐車場、2階が病院になっています。
